専門業者でもあまり知らない近代建築のシロアリ被害。
代表的な近代建築のシロアリ被害の例は、基礎断熱工法で建てられた住宅の被害です。
コンクリート基礎に貼られた断熱材の内部でシロアリたちが縦横無尽に活動することがあります。
断熱材の中は温かく、シロアリたちにとって過ごしやすい環境です。
基礎断熱工法の住宅のシロアリ対策は、依頼を断る大手業者もいるくらい厄介な被害です。このようなタイプの住宅の場合も薬剤による駆除予防がとても効果的です。
なぜ基礎断熱はシロアリに加害されるのか?
まず、断熱材が地面に直接くっついているからです。
シロアリにとっては発泡スチロールのような断熱材は簡単に大顎で砕いて、自分たちの通り道や住処にすることができます。
二つ目は、断熱材ですから、暖かくシロアリ達にとって居心地がいいからです。住宅の断熱材は外敵もいないですし、木材へのアクセスにも優れていますから、もしかしたらシロアリにとって最も適した住処かもしれません。
三つ目は、断熱材はとても柔らかいということです。シロアリは木材を加害するときも、柔らかい部分を優先的に加害していきます。ですから、発泡スチロールのような断熱材は被害の進行スピードが早く、被害の拡大しやすいのです。
では、基礎断熱工法のシロアリ被害の駆除を大手の業者が断っているのでしょうか?
それは、難易度が高いというのがまず第一の理由ではないかと思います。というのは、私が勤めたことのある会社は、基礎断熱工法の住宅でのシロアリ駆除の依頼を断っていなかったので、これは推測になってしまします。
ただ、依頼を断る気持ちも理解できます。それは、基礎断熱工法のシロアリ駆除は厄介だからです。
まず、被害が広範囲である場合が多く、中には2階部分にも被害が及ぶことも珍しくありません。
そして、薬剤の知識が必要になります。
基礎断熱のシロアリ被害は地面に直接薬剤を散布、注入する必要があります。
そのためには、土壌に定着しやすい薬剤を選択する必要があります。
その薬剤を選ぶ知識が必要になります。
また、土壌に定着しやすい薬剤と言っても、家屋の外周に薬剤を散布するのですから、環境への配慮も当然必要になります。
施工者は環境への影響も考えた薬剤を選ぶ知識も必要になるのです。
最後が、再発の可能性です。
通常でしたら、床下からシロアリは発生するのですが、基礎断熱工法の場合は外周から発生します。
また、基礎断熱の中は目視することができません。その場合は、施工方法と薬剤の選択で駆除するしかありません。大抵の場合はうまくいくのですが、目視して駆除する場合と比べると、シロアリ被害の再発の可能性は高くなります。再発した場合は様子を見ながらの長期的な作業になることがあります。
再発してしまいますと、お住まいの方の理解が必要になります。
では、どのような方法で基礎断熱工法の住宅のシロアリ駆除を行えばいいでしょうか?
まず、基礎断熱への薬剤の注入です。細かいピッチで、基礎に薬剤注入するための穴をドリルであけます。外周一周同じ感覚で穴をあけるといいでしょう。穴の大きさは。差し込むノズルにより異なりますが、5ミリ以下でしたら、復旧した後も目立たないでしょう。
もし、金銭的に余裕があったり、工務店が工事に関わっている場合は、基礎断熱をグラインダーでカットして剥いでしまうという方法もあります。
この方法ですと、被害箇所を目視することが可能なので、より確実にシロアリを駆除することが可能です。
しかし、断熱材のシロアリ被害は縦横無尽に広がっていることがほとんどですから、シロアリの被害が途切れた場所であっても、地面への薬剤散布はしたほうがいいでしょう。
次に、土壌への薬剤散布です。
方法は、基礎断熱が地面に接している深さまで土を掘り起こし、そこに薬剤をたっぷり流し込む方法です。
もう一つが、長いノズルを地面に差し込み、薬剤を加圧注入する方法です。
こちらの方法でも十分に薬剤を注入することは可能です。ノズルを地面に差し込むときは、地下に埋まっている配管などに注意しながら作業します。
そして、大切なのは薬剤の選択です。基礎断熱工法のシロアリ駆除に最も適しているシロアリ用薬剤はアルトリセット200SCです。私は基礎断熱工法のシロアリ駆除にはアルトリセット200SCを使用します。土壌への定着、遅効性の性質、シロアリへの忌避効果がないこと、環境への影響を考慮すると、アルトリセット200SCが最も適しています。
他にも、ベイト工法(毒エサ)による工法も考えられますが、駆除の場合は薬剤を散布、注入する方が、確実ですし、効果が現れるのが早いです。
ベイト工法は予防の際にはとても効果を発揮してくれるでしょう。
基礎断熱工法はとても、住み心地のいい工法です。しかし、人間にとって住み心地のいい温度の空間は、シロアリや他の生き物にとっても居心地のいい空間になります。
ですから、シロアリ被害の予防をすることを他の工法の住宅よりも強くオススメします。
薬剤の有効期間が切れたら、再び対策を知ることで、大切なお家をシロアリから守ることができます。
化粧モルタルの隙間からシロアリが家屋へと侵入していることが、ここ数年で増えています。
その原因は、メンテナンスする人がいないことだと考えられます。
事例自体は少ないですが、化粧モルタルにヒビや浮きなどを見つけたら、そこがシロアリの侵入経路になる可能性があるということを覚えておいてください。
ここ数年多発している、意外なところからのシロアリの家屋への侵入。
シロアリは床下ではない場所からも家屋に侵入して加害することがあります。
代表的な場所が、化粧モルタルのヒビです。
化粧モルタルとは、コンクリート基礎の表面に薄い仕上がりのきれいなモルタルを、それこそお化粧のように塗って仕上げいる使用です。
経年劣化などでヒビや剥離(ハガレ)が起こると、その隙間がシロアリにとって都合のいい隙間になる場合があります。
外敵からは襲われない。蟻道(ギドウ)というトンネル状のシロアリ用の専用道路も作りやすい、など、作業が捗る空間が化粧モルタルの隙間です。
家屋の外周からシロアリが侵入してくることを防ぐには、やはり外周に薬剤処理を施す必要があるのですが、その時使用する薬剤は、環境保全や人体への影響を考えて、極めて安全性の高い薬剤を使用することをおすすめします。
化粧モルタルからシロアリが侵入している場合、床下に蟻道を見つけることができません。
もし、シロアリ被害があるのに、地中から伸びている蟻道が床下にない場合は、化粧モルタルから侵入している可能性があります。
一見なんともないように見えますから、見落としてしまうシロアリ被害です。
化粧モルタルを経由して侵入してくるシロアリの被害は、床下をしっかり点検しても見つけることができず、表面に顕在化しないと発見することはできません。
近年増えている化粧モルタルですが、経年劣化などで最近になって、化粧モルタル経由のシロアリ被害の報告が増えてきています。
化粧モルタルからのシロアリ被害を防ぐためには、外周に薬剤を散布する必要があります。
その時使用する薬剤は土壌に定着しやすい薬剤を選択することによって、雨などで薬剤が流されにくくなります。そうすることによって、薬剤が屋外でも効果を発揮し、シロアリから家屋を長期間守ることができます。
このようなシロアリ被害を近代建築の功罪と言ってもしょうがないことです。
これからも私たちは、より快適な環境を求め続けることでしょう。
企業も人間がより快適に過ごせる住宅の開発を目指します。
このような技術の進歩は素晴らしいことです。今までわからなかったことが解明されるたびに、技術は日々進歩していきます。
技術の進歩に合わせて、さまざまなものが対応に迫られ、問題解決を繰り返すことによって人間社会が前に進みます。
しかし今のところシロアリに対して、永久に持続する完璧な対策はありません。
ですから私たちシロアリ駆除に関わるものは、情報を常に更新し、ベストな対応をしなければなりません。